インタビュー(対談) 600社超への伴走から見えてきた、
企業の競争力を高める「コンプライアンス」対策とは?

企業や投資家がESG経営を重視するなか、ガバナンス強化は企業価値向上に欠かせない取り組みとなっています。そのような背景のもと、ビジネスに必要なデータや情報を効率よく、信頼できるリソースから収集できるかに企業のニーズが高まりをみせています。
一方で、世界的に見ると日本企業のコンプライアンスへの対応力は決して高いとはいえず、 競争力を回復するためにも、企業規模や業種を問わず早急な対応が必須の状況です。
日本経済社情報事業局では、日本経済新聞社のビジネスデータベースサービスの導入および活用支援を担っており、データ活用の観点から企業経営の「攻め」と「守り」につながる活動を支えています。
日本経済新聞社のビジネスデータベースサービスが、これからの競争力強化や企業価値向上にどう貢献できるのか、企業がどのようにビジネスデータを活用しているのか、そして課題はどこにあるのか。実際にさまざまな企業へご提案・コンサルティングを最前線で行っている当社コンサルタント(営業)に取材しました。

信頼できる「リスク」情報を、いかに効率よく収集するか
企業規模・業種を超えて高まる、ガバナンス強化対策

──まずは、情報事業局としての業務を教えてください。

稲川佳臣(以下、稲川):日本経済新聞社が提供する会員制ビジネスデータベースサービスのご提案や導入企業へのサポートなどをメインに活動しています。
具体的には、日本経済新聞だけでなく国内外のメディアの記事や企業情報などを検索できる、日本最大級の総合ビジネスデータベースサービス「日経テレコン」をはじめ、企業・業界分析に特化した「日経バリューサーチ」、新聞記事のクリッピングサービスである「日経スマートクリップ」などがあります。

片山沙耶(以下、片山):加えて、昨今ニーズが高まっているのが、取引先のコンプライアンスチェックやデューデリジェンスに活用される「日経リスク&コンプライアンス」です。

──膨大な情報が無料で検索できる時代に、有料サービスとして選ばれている理由は?

稲川:確かに無料の検索サイト経由でもあり余るほどの情報が得られますが、その情報はどこが発信し、本当に信頼できるものかどうか、という確証はありません。特にビジネスの場面では、情報の真偽次第で経営判断を誤ったり、企業の信用問題や持続可能性に多大な影響を与えるケースも少なくありません。偽のコーポレートサイトまで存在する昨今では、「日経」という信頼と価値があるからこそ選ばれているといえるのではないでしょうか。

──最近特に高まっている企業のデータニーズとは?

片山:企業にとってのリスク情報を、いかに効率よく正確に集めるか、ということに関心が集まっていることを日々感じます。たとえば「日経テレコン」では、自社情報のメディア掲載状況をチェックしたり、業界ニュースを集めたり、営業先リストを作成したりとさまざまな活用が可能なのですが、最近ではいわゆる“ネガティブ情報”チェックのために活用されるケースが最も多く、実際にお問い合わせやご相談を受けることも増えています。

稲川:ご存じの通り、環境(Environmental)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視するESG経営の概念が広まりつつあります。企業は持続可能な経営を目指し、環境問題や社会的責任、適切な統治に焦点を当てることが求められています。こうした動きに伴って企業はリスク管理を強化し、透明性のある経営を実現する必要があります。

片山:リスク管理をもう少し具体的にいうと、いわゆる取引先に対する「コンプライアンスチェック」もその一つです。企業が取引先やビジネスパートナーなどと関係を構築する際、たとえば、相手方が不正や不祥事に関与していないか、反社会的勢力などの好ましくない組織と関わっていないかといったリスクを確認し、取引可否の判断を行います。官公庁や地方自治体が公表している行政処分情報のほか、過去のメディア掲載記事検索などを活用することも可能です。最近では、法規制の複雑化などを背景に直接の取引先だけでなく、取引先の関係者までリスク管理の対象範囲も拡がってきています。
実際、地方のメーカー様から、直接の取引先に対する審査はこれまでも行っていたが、最近その取引先のそのまた取引先が反社会的勢力と関係があることが判明したことから、取引先の関係会社を含めて、リスクの洗い出しを急ぎ行いたいといった相談をいただいたこともあります。

稲川:金融業界では、マネーロンダリングやテロ資金供与などへの対策として、継続的な顧客管理が求められており、各社急ピッチで体制整備を進めています。マネーロンダリング・テロ資金供与対策においては、国内だけでなく、制裁対象者をはじめ、海外のリスク情報も継続的に確認することが求められています。先ほどご紹介した「日経リスク&コンプライアンス」では、マネーロンダリング・テロ資金供与対策に必要な海外情報も網羅していることから、銀行や証券会社はもちろんのこと、保険会社やクレジット会社、投資運用会社まで、さまざまな企業から注目されています。

片山:実は、日本企業は世界的に見るとコンプライアンス・リスクへの対応が遅れているといわれています。上場企業の中にも取引先のコンプライアンスチェックをほとんど行っていないという会社もあるくらいです。

──それはグローバル企業だけの問題ではないということでしょうか?

片山:もちろんです。国内で活動する企業でも、調達先が海外に広がっていたり、先ほどのように取引先の取引先が海外であったりといったことは避けられません。
社会の構造や価値観が大きく変化し将来への不透明性が増すなか、多くの企業が新規事業を模索したり、ブランディングを行ったりと大規模な変革をめざしていますが、実は見えないリスク管理の強化も、ESG経営、企業の持続可能性という意味で必須の条件だといえるでしょう。

導入後のサポートも
ビジネスデータベースサービスの価値につながる

──ニーズの増加にあわせて導入企業が増えていくなかで、導入後の運用面で課題は?

稲川:中核サービスである「日経テレコン」は、先ほど申し上げた通りさまざまな使い方が考えられます。実は、コンプライアンスチェックへの活用というのもお客様が最初に気づかれた使い方なのです。こういった私たちが想定していないようなことも含めて、工夫次第でさまざまな使い方ができる一方で、実際に導入後の使い方で悩まれるお客様が多いのも事実です。

片山:やはり導入後のサポートは欠かせません。常に利用状況(検索状況)を把握して、使い方のサポートをさせていただいたり、検索方法のご提案をしたりしています。
また、ビジネスデータベースサービスという特性から管理担当者様と実際の利用者様が異なるケースも多いため、そこは日本経済新聞社とタッグを組んで、利用者様へのアンケートを取ったり、テーマ別のセミナーを開いたりとさまざまな方法でバックアップを行っています。

稲川:先日も、とある企業に訪問して社員様向けに100人規模での「使い方セミナー」を提供してきたばかりです。最近では地方の企業様からセミナーへの参加も多く、リモートなども活用しながら実施しています。

片山:そういった機会にお客様と直接お会いすると、実際にサービスを活用したことで、リスクを避けられたなど感謝の言葉をいただくこともありますね。

──ビジネスデータベースサービスを通して、企業のリアルな課題に日々接しているのですね。そのほか、どんな事例がありますか?

片山:スタートアップ企業を何社か担当しているのですが、創業時からリスクマネジメントに関して意識が高い経営者が多いと感じます。特にIPO(株式市場への上場)をめざすためには、リスク情報管理は必須ですから、データ活用という側面から企業経営をバックアップすることで、将来有望な企業のIPOをサポートできた時は、とても嬉しい瞬間です。

広告会社がビジネスデータベースサービスを
提供する意味

──企業コミュニケーションを担う日本経済社として、ビジネスデータベースサービスを提供する意味とは?

稲川:成長をめざす企業の課題にワンストップで応えられる、ということではないでしょうか。IPOをめざしている場合、データ活用、情報統制といったサポートだけでなく、情報発信、つまり企業コミュニケーションの提案も可能です。“この部分”だけお手伝いします、といったことでは、日本経済社としてめざす「信頼される伴走者」にはなれません。実際、広告の制作部門と連携するなどの取り組みも増えていますね。

片山:「日経テレコン」では、自社の情報をメディア各媒体がどのように扱っているかといったメディア横断検索も可能で、広報部からのニーズも多いです。リスク情報という観点からのお話をメインでしてきましたが、私たちとしては、経営企画、総務、営業、など部署を越えて企業活動をサポートすることができます。

稲川:データを取り扱う部門というと、どうしてもデジタル一辺倒だと思われがちですが、実は、多くのお客様と日々接することができる仕事です。サービスに対するお問い合わせをいただいたり、そこから発展して企業の経営に直接関わるような課題をご相談いただいたりと、私自身はむしろ人にしかできない“企業課題の最前線にいる仕事”ではないかと考えています。お客様が何をしたいのか、いまビジネスの現場で何が課題になっているのか、ということを抽出し解釈する力が常に求められますし、そこが何よりの面白さだと思っています。

片山:私たちはビジネスデータベースサービスのプロフェッショナルであると同時に、企業の課題を引き出すプロフェッショナルであるということ。特に「リスク」情報にニーズが高まっていて、金融庁はじめ国をあげて取り組んでいるいまは、常に最新の情報を取り入れて、企業の皆様にどうお伝えし、実務に役立てていただけるか、ということにも取り組んでいます。

──最後に、「信頼される伴走者」としてどんな未来像を描いていますか?

稲川:新しいことを取り入れていく、チャレンジしていくことが「攻め」の戦略だとすれば、企業が「リスク」に先手を打って対応していくことは「守り」の戦略といえるかもしれません。この「攻め」と「守り」の両軸があってこそ、企業の成長は実現していくはずです。

片山:リスク情報に限らず広い視点で日本経済新聞社ならではの信頼される情報を、どう企業力につないでいくことができるか、挑戦する企業をどうバックアップしていくか。ますます求められるチームになっていきたいですね。

出演者

稲川 佳臣
株式会社日本経済社
情報事業局
アカウントディレクター

出演者

片山 沙耶
株式会社日本経済社
情報事業局

※内容および出演者の所属・肩書は2023年9月現在のものです。

BACK TO LIST