インタビュー(対談) マルチステークホルダーに届く、“攻報”のススメ
~多メディア時代の広報戦略とは~

企業の経営姿勢やメッセージに基づいた取り組みを広告で発信し、広告を起点に話題が拡散するPR発想の広告クリエイティブが注目を集めています。今回は、そのようなPR視点のアイデアで、話題になる広告をつくる「クリエイティブPR」の第一線で活躍されている神谷準一 氏(株式会社神谷製作所 代表取締役社長)に、多メディア時代にマルチステークホルダーにアプローチする企業のコミュニケーション戦略について、クリエイティブPRの有効性や秘訣などをお聞きしました。

コーポレート・コミュニケーション戦略、
多メディア時代は広報から“攻報”へ

大根田 薫(以下、大根田):昨今、ダイバーシティへのメッセージが込められた採用広告や、新しい働き方を提唱するような広告、コロナ禍での飲食店の利用制限のような社会課題に対して一石を投じるような広告など、企業のポリシーを斬新なクリエイティブで発信する新聞広告の事例がよく話題になります。かつては商品や企業を認知してもらうことを一番の目的としていた広告ですが、社会に対する企業の存在価値やパーパスに紐づくメッセージを発信することで社会の共感を得る、というように、広告の目的や役割が広がってきました。さらに「話題」という点に着目すると、セグメントされたターゲットに訴求していく「広告」から、企業を取り巻く様々なステークホルダーに対して広く報せるという、「広報」的な狙いがあるのではとも思えます。こうした企業側の広告事例が増えている背景について教えてください。

神谷 準一氏(以下、神谷):かつてはテレビCMなどのマス広告を流していれば消費者にも、株主にも企業活動が認知されていましたが、現在はメディアが多様化しています。特に若年層にはYoutube、TiktTokなど次々と新しいメディアが浸透してきています。一度に同じメッセージを消費者・採用候補者・従業員・取引先など企業にとって重要なステークホルダーに届けるコストが非常に高くなっているといえます。一方でステークホルダー資本主義が声高に叫ばれ、企業は情報コストが高くなる中で、マルチステークホルダーにメッセージを届ける必要があり経営者・広報部には非常に頭が痛い問題ではないかと思います。通常の“広報”ではコミュニケーションが難しい時代になっているといえます。そこで御提案したいのが、発信する情報に拡散&浸透性を増す“攻報”戦略です。

神谷 準一(かみや じゅんいち)東京都本郷生まれ。東京大学農学部卒。2004年博報堂入社、PR戦略局に配属。2009年より博報堂ケトル。2016年9月神谷製作所設立。博報堂ケトルでは、PR出身者ならではの広報スキルと広告・デジタルをミックスしたキャンペーンディレクションを行う。2005年ソニーエリクソン社の音楽ケータイによる「Deftech同時多発LIVE」でFuture marketing Award受賞・カンヌ広告祭ファイナリスト、2009年「私がクマにキレた理由」で交通広告グランプリ、2010年「MOTTAINAI」でADFESTブロンズ・経済産業大臣賞を受賞。2017年ADFESTゴールドなど国内外の受賞多数。

ニュース性を武器とした“攻報”でマルチステークホルダーにアプローチ

大根田:単に広く報せる「広報」にとどまるのではなく、届けた先の拡散まで設計する「攻め」のコミュニケーション戦略、重要ですね。広告が起点となっている点も非常に興味深いです。しかし、単に「拡散すればよい」「バズればよい」というのは、企業姿勢を表すコーポレート・コミュニケーションという点では少し違う気もします。その点、きちんと企業姿勢への共感を得ながらも、好意的な拡散と受け手への浸透を促すための秘訣はありますか?

神谷:発信する情報に拡散&浸透性を持たせるのに有効な武器は“ニュース性”です。下記の図は弊社で使っているニュースマンダラという図です。真ん中に発信したいプレスリリリースや企画、インナーメッセージなど置き、そこにニュース性があるかをチェックするツールです。

結論から申し上げると、このニュース性を同時に3つ以上満たすときに報道番組に採り上げられたり、社内でウワサになるような現象を作ることができます。従業員に浸透させたい健康経営施策で事例を説明しましょう。例えば最近様々な健康経営を目指す企業に人気の「ブレストラン」という法人向けヨガサービスがあります。「おいしい呼吸のレストラン」という新規性のあるコンセプトで、朝礼やランチタイムに座ったまま呼吸を整える短時間のヨガを行い、従業員の運動不足解消・メンタルケア・コミュニティ活性化を促します。そのどれもが健康経営に求められる施策に必要な要素を満たしています。

とあるエンジニア中心の企業でのブレストラン実施風景

さらにブレストランは先ほど説明したニュース性を3つ以上満たしています。“新規性”のあるコンセプトの健康経営支援サービスであり、従業員が楽しく参加し体験を共有できる“共有性”があり、会社で呼吸だけのヨガを楽しむという“意外性”があります。さらに写真の通りこのユニークな風景に“フォトジェニック性”というニュース性があり、この1枚の写真が社内報であったり、社内イントラネットで情報拡散します。これを見た従業員の方達は、私もやってみたい!また参加したい!という気持ちになり、健康経営施策の企画や施策実施にこれまで以上に積極的な姿勢が見えるはずです。

もちろん、健康経営企業としての対外的な情報発信にも、これらのニュース性を含んだ健康経営施策は有効です。実施レポートをプレスリリース化して配信したり、採用説明会などで紹介する際には、これまでになくメディアや採用候補者の興味を引き付けることになるでしょう。

コーポレート・コミュニケーションこそ、
新聞広告×ニュース性の“攻報”で事業成長を

大根田:報道としてのニュース要素から逆算した設計ですね。これは企画段階から意識することで拡散性のあるファクトを見つけることができそうです。広告においても、ファクトの重要性が増しています。それはSNSの普及やメディアの多様化により、企業は表向きの顔だけでは生活者に見透かされてしまうメディア環境があるわけですが、冒頭にあげた新聞広告の事例は、いずれも企業姿勢・メッセージを具現化する、本気の取り組みがきちんとあるからこそ、世の中の共感を生み、拡散したのでしょう。神谷さんが関わられた具体的な事例がありましたら、ご紹介いただけますか。

神谷:さきほどご説明した通り、従業員エンゲージメントを高める施策や健康経営施策の浸透、そして「採用ブランディング」でもこの“攻報”は使えます。どれも企業の経営課題を解決するテーマばかりです。丸亀製麺を運営するトリドールでは、企業認知度が低く他の外食競合企業に優秀な学生を取られてしまうという悩みがありましたが、日本経済新聞を使って「入社式」をニュース化し、エントリー数を大幅増加させることに成功しました。

もちろん新聞広告そのものの効果もあり、それは採用候補者の「親の信頼度」を向上させるのに役立ちます。新聞広告起点のWEBニュースで若年層である採用候補者にリーチし、さらに新聞広告そのもので親の信頼を得るPRと広告のハイブリッドは、採用における“攻報”コミュニケーションと言えるでしょう。

「入社式」をニュース化し、採用問題を解決

この手法は採用分野のみならず、株主総会や大型資本業務提携の際に目を引くニュース性のある新聞広告とWEBニュースでIR分野でもポジティブなニュース拡散をすることができます。その際にも経済情報に強い日本経済新聞との相性が良いと思います。

大根田:確かに、日本経済新聞は、経営層をはじめとしたビジネスの中核層、あるいは投資家層に身近な媒体ですね。そして、広告掲載企業に対して他のメディアと比べても『一流感』『信頼度』のイメージをもっていただけることが多いです。この2点は、日本経済新聞ならではの強みです。冒頭の事例のように、日本経済新聞ではこうした企業メッセージや社会課題へのスタンスの表明の場として相性がよいと考えています。

当社では特にBtoB企業のクライアント様のコミュニケーション支援をすることが多いのですが、BtoB企業は、一般生活者からの理解が難しい反面、世の中になくてはならない技術を持つことから社会に対する影響度合いも大きくステークホルダーも多岐にわたります。だからこそ、“攻報”はマルチステークホルダーへのアプローチに有効と言えますね。

神谷:はい。BtoB企業はどちらかというと「守り」の広報が多いと思いますので、マルチステークホルダーとのコミュニケーションが必須の時代には、是非広報部の「攻報化」にトライして欲しいですね。

大根田:企業活動の円滑な遂行と持続的な成長には、ステークホルダーの理解・支持が必要です。そのための“対話”がコーポレート・コミュニケーションですが、それは取り繕ったイメージではなく、ファクトを以て対話することで、ステークホルダーの共感・信頼へと繋がると私たちは考えています。この“攻報”では、企業のファクトが核になっているからこそ、大きな反響を生み、事業の課題解決へと効果を発揮します。1社でも多くの企業チャレンジをお手伝いできればと思います。

日本経済社と神谷製作所ではこのように日本経済新聞の広告にニュース性を付加して“攻報”を実現させるプログラムを作りました。さらに“攻報”実現にご関心のある方は「資料ダウンロード」ボタンから「NIKKEI Deep Engagement Program(簡易版)」資料をダウンロードください。

出演者

神谷 準一氏
株式会社神谷製作所
代表取締役社長

出演者

大根田 薫
株式会社日本経済社
コーポレートコミュニケーション戦略室 次長

※内容および出演者の所属・肩書は2023年7月現在のものです。

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