インタビュー(対談) 物流業界も、生活者一人ひとりも「試されている」
BtoBという枠を超えて、その想いを共有したい。

鉄道、物流業界関係者だけでなく一般の生活者までもが、日常のすぐ近くに“物流”があり、日々の生活が支えられていることを感じずにいられない印象的なビジュアル。第72回日経広告賞「政府公共・外国政府・商社・物流部門」(2023)において最優秀賞を受賞した日本貨物鉄道株式会社(以下、JR貨物)。いわゆる「物流の2024年問題」が目前に迫るなか、この企業広告に込めた想いとは。BtoB企業としてコミュニケーションをどう捉えているのか。代表取締役社長兼社長執行役員 犬飼 新 様にお話を伺いました。

ZOOM

「モーダルコンビネーション」
企業の枠を越え、
日本全体が抱える社会課題に切り込む

指宿:まずは「日経広告賞」5年連続での受賞おめでとうございます!
ビルの合間を縫うように伸びる高速道路と線路。流れるトラックの列、そして画面をはみだすほど長く連結された貨物列車のラインが、ふっと寄り添い、そして再びそれぞれの方向へと向かっていく。正面のビルの中ではきっとビジネスパーソンがいつものように仕事をしているのでしょう。鉄道の広告でありながら、何気ない日常全体をみつめた客観的な目線にハッとさせられた広告でした。

犬飼:ありがとうございます。目前に迫った「物流の2024年問題」をテーマとした広告での受賞にとても意義を感じています。5年連続受賞となるわけですが、取り上げるテーマも時とともに変遷してきています。最初の3年間を私たちは「鉄シリーズ」と呼んでいるのですが、普段外からは見えない私たちの仕事や熱意を発信してきました。そして昨年からは、いま日本が抱える物流問題に切り込み、「競争から協調へ」というテーマでの広告展開を行なっています。2年目となる今回はいわゆる貨物列車の格好いいビジュアルではなく、まさにおっしゃる通りごく普通の生活のなかに貨物鉄道輸送がありトラック輸送があり、普段は意識せずとも生活もビジネスも物流に支えられている、そのようなことが見た方に広くインパクトを持って伝わったのではないかと思っています。

「この国の物流が、試されている」
に込めた想い

指宿:御社では「モーダルコンビネーション」というキーワードのもと、鉄道、トラックはもちろん、船舶や航空機など各輸送モードの特性を活かしながら、「シフト」でも「ミックス」でもなく、「コンビネーション」で課題を乗り越えていこうと、物流全体の変革を目指されています。これを推し進めていくためには、今まで以上に幅広いステークホルダーと共感しあい、協力しあっていくことが求められ、コミュニケーションの重要性も高まっているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

犬飼:いまニュースでも盛んに取り上げられている「物流の2024年問題」は、トラックドライバーの労働時間規制への対応だけで解決できるような課題ではありません。ある調査ではトラックで運べなくなる荷物が2024年で14%、2030年で34%という予測もあり、本当に差し迫った問題なのです。物流業界全体の課題であることは当然として、「モノをつくり届けたい」荷主様側との協力も必要ですし、もっといえばビジネスとしてだけでなく、生活者一人ひとりの意識変化も必要だということです。

当社はご存知の通りBtoB企業で、引越しサービスなどをのぞいて直接消費者の方と関わることはほぼありません。しかし私たちが直面している問題を解決していくためには、この国に生きるすべての人が当事者になっていかないと解決しない。ネットショッピングで購入した商品が、毎回、例えば本当に翌日の朝に届かなければいけないのか、コンビニやスーパーで食品を買う時に棚の後ろからわざわざ賞味期限の遅いものをとらなければならないのか。こういったことも含めて、全員が考えられる、気がつける機会を提供したいという想いが強くあります。
「この国の物流が、試されている」というキャッチフレーズは、コピーライターの方から提案いただいたものですが、物流業界だけでなく、生活者も含めたすべての人が「試されている」ということを伝えてくれていると考えています。

とはいえ生活者の意識を変えるというのはとても難しいことです。ただ、この広告を発信したところ業界や会社の関係者だけでなく、私の学生時代の友人などからも声をかけられました。それだけ普通の人々にも届いた広告だったのではないでしょうか。

課題感を同じ視点で捉え、
理解してくれているからこそのクリエイティブ

指宿:制作にあたっては、特にビジュアル面で社長の強いご要望もあったと伺っております。日経広告賞を5年連続受賞し、今回も見る人に強いメッセージを残す広告となったポイントは、どのあたりにあるとお考えですか。

犬飼:まずクリエイターの皆さんにしっかりと伴走していただいたことだと思います。当社が抱える課題感を同じ視点で捉え、理解していただいているからこそのご提案であり、実現した表現だと思います。写真については「モーダルコンビネーション」を伝えていくにあたり、よりイメージにあうものに再考していただくなど、私たちの要望に粘り強く応えていただき、本当に感謝しております。シンプルな一枚のビジュアルに、端的に私たちの想いを伝えてくれるキャッチコピー。まさにこれもビジュアルとコピーの「コンビネーション」の力ですね。

BtoB企業にとって、広告とはいますぐ売上に貢献するようなものではないかもしれません。しかし、社員やその家族はもちろん、これからの会社、日本を変えていくであろう若い世代にも、当社が「モーダルコンビネーション」に本気で取り組んでいるということが伝わったことの意味は大きいと考えています。特に若い人たちは社会課題解決に積極的ですので、私たちからのメッセージも、しっかりと受けとめてくれているはずです。

指宿:ありがとうございます。制作スタッフも社長の言葉にほっとしていると思います(笑)。高度成長の時代には、より便利に、より早くと、とにかく発展、発展で日本中が走り続けてきましたが、豊かさの定義が変わり、成長の意味が変化したなかで、私たち一人ひとりの意識が社会を変えるためには重要なんだ、そして、そこに広告が果たす役割があるのだ、ということを再認識いたしました。
私たち皆が「試されている」、広告も試されている。いま、そんな思いがしております。

【制作スタッフからのコメント】

毎年半年以上もの時間をかけ、チーム全員で何度もミーティングを重ね、課題と想いを共有し、広告をつくり続けてきました。そのすべての積み重ねが広告賞の5年連続受賞というこれ以上ない成果につながったと感じています。これからの社会にとってなくてはならない貨物鉄道輸送がさらに前進を続けていくための原動力として、「広告」の力が一助となることができるよう、より一層尽力していきたいと思っています。

出演者

犬飼 新 様
日本貨物鉄道株式会社
代表取締役社長兼社長執行役員
 

聞き手

指宿 ひとみ
株式会社日本経済社
上席執行役員
 

制作スタッフ

上田 伸彦
株式会社日本経済社
クリエイティブ局 第3部
コピーライター

※内容および出演者の所属・肩書は2023年12月現在のものです。

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