コラム コーポレート・コミュニケーションは
どのようにして企業価値向上に資するのか

企業を取り巻く環境の変化によって、マーケティング・コミュニケーションの対象となる顧客・消費者にとどまらない多様なステークホルダーを対象と考えるコーポレート・コミュニケーションの重要度は高まる一方であると言えます。本稿ではコーポレート・コミュニケーションの研究者であるコーネリッセンの議論を取り入れて構成した「組織のステークホルダーとのコミュニケーションの構造」をもとに、企業価値向上に貢献するコーポレート・コミュニケーションをどのようなものなのかを考えていきます。

企業価値向上に貢献するコーポレート・コミュニケーションをどのように考えるか

コーポレート ・コミュニケーションの研究者のコーネリッセンはコーポレート・コミュニケーションについて、従来、プレスとの関係を中心的なものとして考える「パブリックリレーションズ」が主流であった外部のステークホルダーとのコミュニケーションが、「企業の内部と外部の他のステークホルダーが企業からより多くの情報を求めるようになった」ことをその起源であるとしています。そして、それは手法においては「コーポレート・デザイン、企業広告、従業員に向けたインターナルコミュニケーション、イシューマネジメント、危機管理を含む幅広い範囲の特化された領域」1)が取り入れられるようになったとされていますが、その一つである「コーポレート・デザイン」は、単なるデザイン以上の「アイデンティティ」とされるものを含む重要なポイントです。筆者が、そうした視点を含むコーポレート・コミュニケーションについてのコーネリッセンの議論を取り入れて構成したものが、下の<組織のステークホルダーとのコミュニケーションの構造>です。

<組織のステークホルダーとのコミュニケーションの構造>

Cornelissen(2020)をもとに筆者作成

この図に示されている最も基本的な考え方は以下の3点です。

①コーポレート・ブランドアイデンティティを起点とした組織の活動を通じて提示される「製品・サービス」「組織の実体・行動」そして「エクスターナルコミュニケーション」が、ステークホルダーによるコーポレート像を形成する。

②コーポレート・コミュニケーションにおいては、ステークホルダーによるコーポレート像と組織の活動の起点となっているコーポレート・ブランドアイデンティティとの「差異」を解消しようとする活動が重要となる。

③「差異」の解消を目指す活動に取り組むにあたってはA、B、Cの3つのポイントに着目することは有効である。

本シリーズでは、こうした考え方に基づいて、企業価値向上に貢献するコーポレート・コミュニケーションの課題について検討していきます。

注(1)Cornelissen, J. (2020) Corporate Communication A Guide to Theory & Practice, SAGE.

執筆者

日本経済社
コーポレートコミュニケーション戦略室
博士(経営学)
野口 豊嗣

※内容および出演者の所属・肩書は2023年5月現在のものです。

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